ヨガとトラの皮パンツのシヴァ神
2015.08.11
ヨガを学んでいる人が一度はどこかで出会っているであろうインドの神様たち。それは美しいサリーに身を包んだ女神や、象の頭をもつコミカルな姿。ときには獣に乗り、ときには恐ろしげな姿のヒンドゥー教の神々です。
インド神話の中の神様たちは皆、感情豊か。ギリシャやローマの神話のごとく、情熱的な愛やジェラシー、どろどろのメロドラマや悲恋の物語がたくさんあります。完全無欠の神ではなく、とても人間臭い、欠点をたくさん持った神様たちです。だからこそ、ヨガを学んでいる神様もいます。
ヨギとしてのシヴァ神
それがシヴァ神です。実はシヴァ神だけは決定的に、ほかの神々と違う容姿をしています。美しく着飾った豪華絢爛な神々の中でただひとり、モジャモジャの髪をして首に毒蛇を巻き、しかも服装は虎皮のパンツ【腰巻)一丁! そう、実はこの姿はヨガの修験者としてのシヴァ神の姿なのです。
神話ではシヴァ神は最初のヨギといわれています。ヨガの練習方法を記した古い書物に「最古のヨギであるシヴァは〇回これを行なった」というような記述も見られるそう。ヨガの練習となるととたんにシヴァ神がでてくるのは、こんな理由からです。
でもヨガの練習には多くの他の神々も大切です。例えば日常生活とヨガを考える上で指針となる聖典「バガヴァッド・ギーター」ではクリシュナ神(ビシュヌ神)が中心。またヨガのアサナの名前としても名高い猿王ハヌマーンや、聖なる牛ナンディンなども欠かせない神々の一部。
そして、ここまでインドの神々に深いつながりがあっても『ヨガは宗教でも、哲学でもない』のです。その理由は、ヨガが「特定の神の象徴がない」ということに起因しています。
すべてをつなぐひとつの神イシュワラ
ヨガの中ですべてをゆだねようとしている神は「至高主・自在神」と呼ばれるもの。つまり固有名詞を持っている神ではないのです。
例えるなら「大いなる自然」「大宇宙」などと共通の、ヨガ行者シヴァ神もビシュヌ神も、美しい女神たちも、すべての神様をぐるっとまとめてひとつにした「存在そのもの」への祈りです。この「自在神」のことをサンスクリット語では「イシュワラ」といいます。
インドのアシュラム(寺院)やヨガを学ぶ場所へ行くと、必ず祭壇があります。インドでは一家にひとつ、きちんとした祭壇がありますから当然でしょう。しかしその祭壇が良く見ると奇妙なのです。そこにはヒンドゥー教の神々にまざり、キリスト教の神であるキリストやマリアの姿があります。
こうしたいわゆる異教の神々も、もとを正せば「イシュワラ」の化身。何もかもをとりまとめた大きな視野と心を持っているヨガでいう神「イシュワラ」。私たちの心ももっと広く大きな視野を求めて、ヨガをしているのかもしれませんね。