神か人か?!不思議な聖者パタンジャリのヨガスートラ
2015.07.01
ヨガは人生の中で起こり得るたくさんの出来事・・・それは「良いこと/悪いこと」どちらも含めてですが、それに上手に向き合い、付き合っていくための「術」であると思います。
それをさらに細かく攻略本のように展開をしてあるのが『ヨガスートラ』という名前の本。今ではインド哲学ひとつの流派「ヨーガ学派」の根本経典、つまり聖書や教科書のようなものです。聖者パタンジャリ先生によって記されたと伝えられています。
「スートラ」はサンスクリット語の直訳では「糸」の意味。「スートラ」とは詩という意味です。パタンジャリ先生が短い詩の中で、ぽつりぽつりとですが、しかし的確にヨガの道を指し示してくださっています。『ヨガスートラ』は、今のヨガであるところの「ラージャ・ヨガ」の実践の指導・教科書としてはもちろん、現代ヨガの哲学部分の土台を担ってくれています。
謎の男? パタンジャリ先生
パタンジャリ先生はインドに実在していた人物。とっても頭の良いスーパーマスターで、サンスクリットの言語学、インド伝統医学のアーユルヴェーダ、そしてヨガの3つに長けていたといいます。生涯をヨガの普及に費やしたといわれ、その集大成が『ヨガスートラ』といわれています。もちろん私たちと同じようにヨガをしていたことでしょう。けれどとても謎めいたところもあります。
インドでは、パタンジャリ先生はまさに聖者。ビシュヌ神の使いで守り主である千の頭を持つ聖なる白蛇「アナンタ:無限」の生まれ変わりといわれています。実はヨガの創設者であるシヴァ神がヨガについて語っているのを盗み聞きしてしまい、シヴァ神に人間に広める使命を課された、といわれています。
だからインドでパタンジャリ先生を探すと、たいてい下半身が蛇だったりします。頭からも蛇がいっぱい生えています。インドの神様は人になったり神様になったり自由自在ですね。もしかしたら元々は人間としてヨガを極め、神様になったのかも。そしてまたぐるっと、人間のために教えを残してくださったのかもしれませんね!
パタンジャリ先生は生まれ落ちたのもとても不思議な逸話が。人に生まれ変わるのには母親が必要だったアナンタ。ある日、水辺で身を清めながら祈りを捧げるゴニカという女性が。手を合わせ男の子が欲しいと願っていたのです。そこでそっとアナンタは手の中へ・・・ゴニカさんが目を開けると、彼女の手の中には小さな白ヘビが。そしてそれは小さな人へと変わっていったのです。
ゴニカさんは、自分が手を合わせた合掌:anjali の仕種のとき、ポトリと天から落ちて:pat 来たので、それに由来してその子に「パタンジャリ:patanjali」と名前をつけました。パタンジャリは、人々のために天から祈りの合掌の中に落ちて、たくさんの人々の苦しみを救ったという意味の名前なのです。
毎日の中にある教え
そんな神様の伝えてくれた経典『ヨガスートラ』は全4章で構成されています。1章は「サマーディパーダ」。サマーディとはヨガの実践で目指す所。シヴァ神から盗み聞ぎしちゃったところでしょうか。2章は「サーダナパーダ」。サーダナとは「実践」を表す言葉。人間だったときのことを活かして、こんな時はこうするといいよ、みたいなことが書かれています。生活の中に取り入れやすい章です。
そして3章は「ヴィブーティパーダ」。私たちが本来持っているけど、埋もれてしまっている能力を引き出すアプローチについての章。4章は「カイヴァリヤパーダ」。カイヴァリヤは、条件をつけたりジャッジしたりすることから解放された自由・・すまり「神との合一」について書かれています。つまり後半ふたつの章は、パタンジャリ先生がアナンタに戻っていくような感じでしょうか!
『ヨガスートラ』全4章は、パタンジャリ先生の、神様から人へ、人から再び神様へ! という摩訶不思議な人生の変遷をフルに生かした、とっても素敵な教科書なんです。
パタンジャリ先生は頭が良く文法家だったので、ちょっと素敵な短文詩で教科書を書き上げました。全195個の詩の中に、いろんな角度から「私たちがシンプルに生きやすい方法」のヒントを散りばめてくれています。まるでヨガ攻略本のような『ヨガスートラ』、ヨガに触れる機会があるならこれに触れないのは絶対にソンです! さぁ、一緒に楽しくシェアしていきましょう。