インドの輪廻転生の世界を伝える音楽・シタール
2015.07.18
ヨガをしている人なら、クラスの最中にかかっている音楽に意識を向けたことがある方もいるでしょう。実はヨガには「ナダヨガ」という「音のヨガ」といわれるジャンルがあります。一言にヨガといっても、マットの上でポーズをとるだけがヨガではないのです。どちらかといえば、ポーズをとるヨガは、大きな「ヨガ」という塊の、ごく一部でしかありません。
この世に存在するものが、すべて小さな分子によってできています。そうした小さな分子は、強固に組み合っているだけでなくいつも小さく振動しています。つまり、存在するもの全てが振動でできています。音楽にもリズムやトーンがあり、音は振動となって空間に広がっていきます。そのバイブレーションのエネルギーが、自分の身体の振動とハーモニーを感じたとき、深い満足感と心地よさを体感できるのです。
バイブレーションが伝える神聖な音の世界
つまりナダヨガとは「音」というバイブレーションを体で感じ、この世にあるすべてとの一体感を体験するヨガともいえます。ナダヨガ自体にも様々な方法があります。マントラとして短いサンスクリット語を唱えたり、はたまた楽器と共に神々の栄光を歌い上げるキールタンなどもナダヨガのひとつです。サンスクリット語の持つ神聖な波動の音は、脳内の振動を変え、心が安らかになり、瞑想状態を体感するといわれます。
ヨガの発祥地であるインドでは、こうした音のヨガがたくさんあふれています。そしてそれを支えるために、多くの音楽と楽器が生まれました。大衆歌謡曲はもちろん、伝統的な民謡、宗教歌、舞踊の伴奏音楽、そして最近では西洋音楽と組み合わさり、無限の広がりを見せています。
西洋を魅了したシタールの豊かな倍音
たくさんの姿形を持つインド音楽ですが、その独特な旋律や音の重なり合いや、輪廻的に流れていくリズムなど、古典音楽の時代からの特徴を、今もなおしっかりと形として残してます。仏教やヒンドゥー教には、輪廻転生の思想があります。あらゆる生き物の死はすべての終了地点ではなく、次の生の出発点。インド音楽を聴いていると、その輪廻転生の世界観が、リズムにまでしみ込んでいるように感じるのです。
インドの伝統楽器には、両面太鼓であるムリダンガムや小太鼓タブラといった打楽器、そして木や竹でできたのフルートのバンスリ、ヴァイオリンのように弓で弾く弦楽器エスラジやサーランギ、そして琵琶や三味線の大本ともいわれる弦楽器、ヴィーナやタンブーラ、そしてシタールがあります。それぞれの楽器にはそれぞれの役割があり、合奏されることが主流です。
なかでもシタールは60年代半ばから、ジミー・ペイジやビートルズのジョージ・ハリスン、ローリング・ストーンズのブライアン・ジョーンズらが演奏。欧米のロックファンにもよく知られる楽器となり、ラーガ・ロックと呼ばれました。シタールの独特なミュートのかかった豊かな倍音の音色を、その耳で聴くチャンスがあればぜひ聴いてみてください。ヨガの生まれた国の、輪廻転生の世界観を感じることができるかもしれません。