忙しい日々の中でのゆとりを探す。路地のある街・代官山
2015.07.17
おしゃれな街、住みたい街としていつも上位ランクの代官山。関東大震災以降、代官山は街づくり活動の盛んな街。旧同潤会アパートメントが建替えられるなど大々的な再開発事業が入るたびに、代官山らしい街の風景を守っていくために、住民や地域の専門家を中心に話合いが行なわれ、地域が一丸となって「代官山スタイル」を保つ努力をしてきたのです。
代官山では、渋谷区にある地域特性に応じた街づくりの自主的なルール登録する制度を利用して、建物の高さ制限や緑化の保全を設けた「代官山ルール」をしっかりと登録。それ以外の場所でも、この「代官山ルール」を土台に地域との相談を繰り返しながら、多くの建物を計画してきました。
こうして代官山は、歴史的な建物や自然の風景も残しながら、新しい明るさも持つ欧風の魅力的な街並みとなりました。今では地方都市の街づくりのサンプルとしても取り上げられるそう。
欧風な街並みといえばちょっとした路地も魅力。路地の小さな空間は、静かで車の来ない安全な空間。少しだけ周りとは違うゆっくりとした時間が流れ、優しく囲われた安心感があるのが路地。代官山にもこうした路地がたくさん。いつもは通り過ごしている角を曲がると、そこにはこだわりに満ちた専門店や、長い歴史を感じさせる空間が広がっています。
文化の森の路地裏で文化そのものを感じてみる
近代的な建物や規格化された道を離れたそこは、ほんの少しタイムトリップしているような未知の世界。代官山の特徴でもある傾斜の強い路地は、先が見通せないちょっとしたドキドキ感も。この先には何があるのかな? と新しい箱をあけるような、冒険心くすぐられる路地もたくさんあります。
表通りにあふれる都市的な風景だけではなく、迷路のような可愛い路地には観るものもたくさん! コンクリートの隙間から元気よく伸びていく小さな緑や、見たこともない古い看板。そんな中にたたずむ、オシャレでこだわりのモノを置いたセレクトショップ。代官山ではカメラを持って路地を曲がる人が多いのもうなづけます。
代官山の路地といえばこの、こだわりのセレクトショップを探すことを楽しみにしている方も多いよう。でも代官山の路地の楽しさはそれだけではありません。それは小さなお店を取り囲むようにある可愛いお家。ここに住む人々のちょっとした生活の面影が。お店とお家のエリアが完全に分断されていないのも、代官山の路地の魅力。
ときには住んでいる人の性格までわかりそうなくらい、路地にはその街の日常があふれています。1階がお店のちょっと古いお家、お父さんは皮鞄のクラフトマン、お母さんはそのお手伝い、子供はきっと男の子、なんて妄想ストーリーを組み立ててみるのも楽しみのひとつかもしれませんね。
東京での新しい開発はほとんどが大型店舗化し、同じようなコンセプト、どこでも売っている商品が並んでいる場所が増えてきているといわれています。そんな中、開発を重ねても地域の歴史を引き継ぎ、もともと持つ路地裏の住宅地を土台として、この街にしかないオリジナリティを創り出している代官山。古き良き路地の風景を損なうことなく街を進化させています。
長い時間をかけてゆっくりと穏やかに、でも計算されて創られてきたこの街は、住む人にとっても訪れる人にとってもしっくりくる居心地の良さがあります。路地を曲がるのはちょっぴり勇気が必要かも。
でも路地には不思議な魅力がいっぱい。こだわりのお店や近道を発見して嬉しくなったり、いつのまにか見知らぬところに出て不安になったり、ときには行き止まりにぶつかって引き返すことになってガッカリしたり。でも道に迷うのも路地の楽しみのひとつ! 代官山は小さな街。思い切って路地を曲がって、路地の代官山に出逢ってみてくださいね。