written by MIKAKO：本郷　みかこ
ヨガスタジオ代官山プレジュア代表：古典ヨガに対し、タントリックにヨガを捉えることを心にヨガを学び、ごく普通の日常生活の中でのヨガを探し続けている。

ヨガスートラの始まりにして第１章の１。
いかにもヨガの叡智がたっぷりと詰まっていそうなこの短いセンテンス。

実はこの時代の権威ある書物の始まりにはよく用いられている形だそう。
つまり「これからものすごいこと語っちゃうから、心するようにね！」という感じで使われているそうです。

日本語にすると「atha」は「さて！」、「anuśāsanam」は「教え／教義」というような意味。
とはいえサンスクリット語は一単語が多様な意味合いを持っている言語。
この一文も訳がいろいろな方向性に解釈することができます。

例えば「atha」は「今」も意味します。だから「ヨガ」の大切な教えとは、昔に起こったことや未来に起こることではなく、「いま」というその瞬間にこそ起こる！　とも解釈されます。

もしかしたら「今、この『ヨガスートラ』を開いたその最初の言葉を読んでいる瞬間「atha」にこそ、ヨガがあり、正に私たちとヨガが繋がりを始めた瞬間だ！」ということを伝えたいのかもしれません。

自分だけの「ヨガ」を探すことが『ヨガ』

ヨガとはなんでしょう。
自らを細心の注意を払って「いまの自分」を観察し始めたその瞬間から、自分の中に隠された、宇宙の真実が明らかになっていく。ヨガとはそんな風に、自分の無限の可能性へのドアを、今この瞬間に、次々に限りなく開け続けるような体験。

スートラとは「糸」の意味。
糸のように単純なものが、内側外側、右と左、様々に織り込まれているような「自分」という秘密に満ちた宇宙。その糸をほぐし、自分を探る科学（サイエンス）。
それがヨガなのです。

・・・なんて大層なことを、当のパタンジャリさんが考えていたかどうかは、実はわからないですね。
もしかしたらごく単純に、「これからはじめるよ～」くらいの意味合いで書いたのかもしれません。

けれども間違いなく伝えようとしているのは『私が集めてきた「ヨガである」と理解してきたものをここで話したいと思います』ということ。
始まりの始まりを感じて欲しいということ。

これさえ始まれば／始めれば、誰もがヨガを経験し、真実に気づいていけるのだということ。
深く求めて追いかければ、私たちの内側にこそ神性があることに、誰もが気づくことができるというその確信。

パタンジャリが本心から「『いまこの瞬間』から気持ちを切り替えて、ヨガと向き合って欲しい」と願っている一文が、この「अथ योगानुशासनम् ॥१॥　：atha yogānuśāsanam ||1||　：アタ　ヨーガーヌシャーサナム」なのです。

クラスの始まりのOMやマントラ、呼吸を見つめること・・・
特別にヨガを始める前にも、ぜひもう一度、自分の気持ちを整えて『ヨガを学ぼう／自らを探求しよう』と決め「いま、ここ、わたし」を意識してみてください。

そこに『ヨガスートラ』の真髄があるのかもしれません。